一般質問
私は男女共同参画推進条例について一般質問いたします。 男女共同参画社会については平成十一年六月、国会で「男女共同参画社会基本法」が成立し、地方自治体でもその推進が図られてきました。今回新宿区も平成十三年「男女平等推進計画」を策定、「同会議」を設置し、今定例会に条例案がこの後、提案されることになっております。そのためのパブリックコメントも昨年まとめられ、すでに内容も発表されました。また私自身も先日の総務区民委員会でこの問題に先進的に取り組んでいる北九州市の男女共同参画センターならびに財団法人アジア女性問題研究交流センターへ視察にいって参りました。
さて私はこのような男女共同社会の実現に向けての活動を大いに賛成している一人であります。
二十一世紀を迎え、男女がともにこの社会を支えてゆくためには、これまで、女性のさまざまな日常活動がともすれば「女性であるがゆえに人権侵害を受けたり、制約を受けてきた面がある」ことは否定できません。
北九州市における具体的な施策を例にとりますと
@ 人権侵害の相談窓口の充実
A 男女共同参画のための講座、講演会の実施
B 企業における同様の取り組み
C 小中学校の学校教育での副読本の製作と導入
などがあります。
しかし一方、これらの施策を進めるにあたり その根底の一部に問題のある思想や一部の人間の思惑(おもわく)に影響を受けているのではないかと思われる点があり、私はこのことについて憂慮する者でもあります。
ジェンダーフリーとは「社会的、文化的に形成された性差」と定義され、これを生物学的な性差に優先して、男女格差をなくしてゆこうとする理論であります。この理論には憂慮すべき側面があると言えます。
@生物学的な性別をまったく否定する
A機会の平等ではなく、結果の平等を求める
その結果、大きな無理やこの社会を変革ではなく、破壊しようとする意図すらあるのでは、と私は感じることがあります
この理論は、世の中の男女のあり方について必ずしも大多数の国民の基本的考えとは違うように思います。
このことは先のパブリックコメント制度による区民からの意見でもあきらかです。意見を寄せた13名のうち8名の方が、このジェンダーフリー思想に関連し、懸念を表明されています。
パブリックコメント制度自身が持つ「バイアス」を差し引いたとしても、ジェンダーフリーを危惧する意見が区民の中にあることは十分推察できます。
8名の方々のご意見をいくつか原文のまま引用いたしますと
次のようです
@男女の性差解消などという非科学的なことはせず、男女が互いに尊重しあう規定を盛り込むべき
A機会の均等を保障するものであって、結果の平等を求めない
B家庭は社会の基礎的単位であり、現実に家庭を支え以上ているいわゆる「専業主婦」を否定しない。
C家庭の役割分担に行政が過干渉とならないように。
D男らしさ女らしさを一方的に否定することなく、日本のよき伝統や文化を大切にし、制度や慣行を尊重する
E学校で性の区別を無視した教育や指導が行われないように 行き過ぎた性教育への懸念。
F「リプロダクティブヘルス・ライツ」(性の自己決定権) のような性道徳の頽廃をもたらす内容を盛り込まない。
以上が、パブリックコメントから取り上げた区民の意見ですが、さらにいくつかの問題点を、より明確にするために
二、三 の実例、例証を挙げます。
第一に、男女共同参画社会の基本的精神について、その担当大臣である福田官房長官も参議院の亀井議員の質問に「男らしさ、女らしさを否定するものではない」と答えております。
第二に、先進的と言われる北九州市の視察で感じましたが、現状の人権侵害を改善しようとDV(家庭内暴力)やセクハラなど被害者女性の相談事業を積極的に推進しており、ジェンダーフリー理論をさらに進めて、社会そのものを変えていこうという積極的な意図はないように感じました。
第三に、時間の関係で詳しく述べませんが、他の地方自治体の例では、京都市議会や宇部市議会では、先の政府見解に沿った形で条例が制定されたと聞いています。
第四に、近頃の犯罪の傾向を見ますと、先日の岸和田市の両親による中学生監禁事件、長崎幼児誘拐殺人事件など、まさに、背筋が寒くなる、いや胸の潰れる想いの事件が多く発生しております。青少年の健全教育の観点から、社会の基本的単位としての家族、家族の重要性の見直し、家庭教育力の強化を図っていかなければならないと思います。
そこで先ほどの男女共同参画社会の実現に向けて、懸念すべき点について、五つの質問をさせていただきます。
第一に、率直に申し上げて、ジェンダーフリーの理論には根底に社会基盤を破壊しようとする過激な考えも含まれているのではないでしょうか。女性であることだけで、さまざまな可能性を否定されるのことにはまったく反対ですが、一方で男らしさ 女らしさ を一方的に否定してよいのでしょうか
このようなジェンダーフリーについて区長教育長はどのようにお考えでしょうか。
第二に、社会の核としての家庭、家族の絆の重要性は論を俟たないと思います。
家庭内での家事の分業化や分担の見直しは理解できますが、父親、母親の役割や専業主婦を一方的に否定してよいのでしょうか。区長、教育委員会の見解をお聞かせ下さい。
第三に、青少年の健全育成の観点から しばしば家庭の重要性が叫ばれています 。教育の社会化、保育など家庭の役割の社会化は、女性の社会進出に伴って必要なことですが、なんといっても家庭の教育力の強化こそ、青少年の人間教育、人格教育の前提ではないでしょうか。この点、どうお考えか区長ならびに教育委員会にお尋ねします。
第四に、ひな祭りや鯉のぼりなど文化、伝統の継承を、なぜか一方的に否定するような言説が見られます。もちろん私は戦前の家父長制の復活を意図しているわけではありません。その国の文化、伝統は現在あるものこそ、その歴史・風土に彫拓された英知の集約であり、むやみに理論を振りかざして意図的に変えてよいものでしょうか、区長、教育委員会は文化、伝統の継承を如何お考えでしょうか。
第五に、教育現場で男女の区別を一方的に無視したり、男女共同参画に向けた副読本の作成に当たって、ジェンダーフリーの危険性について配慮を欠くようなことのないようにお願いいたしたいと思います。また、リプロダクティブヘルス・ライツ(性の自己決定権)に関連して性教育についても、今、行過ぎた性教育が問題視されています。同様な危険性のないように、今後とも取り組んでいただきたいと思います。 この点について、区長、教育委員会は、いかがお考えか、お聞かせください。 終わりに、理念型の条例は、とかくさまざまな立場から解釈が行われ、それに基づき、現場での運用が行われる傾向があります。以上のような点を十分考慮にいれた条例の運用を行っていただきたい旨を要望いたします。 私は、偉大な女性、すなわち私の母親から生まれ、そして母から愛情深く育てられた男性であることを常に感謝し、それを認識しているつもりでございます。今後とも、これらの問題について、区民の皆様、特に女性、二十三区初の女性区長である中山区長をはじめ、女性の皆様からのご指導ご鞭撻をお願いいたしまして、質問をおわります。 御静聴ありがとうございました。
答弁要旨
下村議員のご質問にお答えします。
初めに「ジェンダーフリー」についてのお尋ねですが、今回提案している[男女共同参画推進条例」がめざす社会は、男性と女性の違いを一切排除しようとするものではありません。男女が個人として尊重され、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮し、責任も分かち合い,共にあらゆる分野に参画することができる社会の実現を目指すものです。
第一に、ジェンダーフリーについてのお尋ねです。男女共同参画社会の進展に伴って『ジェンダーフリー(教育)』という言葉を見聞きする機会が多くなりました。男女共同参画社会は、性別に関わりなく、一人一人の個性や能力を尊重し、男女が対等な立場で様々な活動に参画して責任を分かち合う社会であり、決して「男らしさ」や「女らしさ」を否定するものではありません。男女の区別をなくしたり、画一的に扱ったりして、男女の違いを一切排除しようとする意味で「ジェンダーフリー」という言葉が使われたり、教育が行われるならば、児童生徒に誤った認識を与えることになります。新宿区教育委員会では、男女共同参画社会の基本理念を踏まえた指導の徹底を図って参ります。
次に、父親、母親の役割や専業主婦を否定することについてのお尋ねです。区の条例(案)では、基本理念に「男女共同参画の推進は、男女が相互の協力及び社会の支援の下に、子の養育家族の介護その他の家庭生活における活動について家族の一員としての役割を円滑に果たし、かつ当該活動以外の活動を行うことができるようにすることを旨として行われなければならない。」と明記しており、従来の父親母親の役割や専業主婦を否定するものではありません。男女が相互に協力して家族の一員としての役割を果たしながら家庭を築いていくことが望ましいと考えています
第二に父親、母親の役割や専業主婦を一方的に否定することについてのお尋ねです。教育委員会といたしましては、父親には父親の、母親には母親の役割があり、また専業主婦も立派な役割であると認識しておりますので、ご質問のことがらを一方的に否定することがよいとは考えておりません。大切なことは人権尊重の観点にたち、男女の区別による画一的な役割分担ではなく、家庭の状況等、多様な環境下で家族がお互いを思いやる役割分担であると考えております。
次に家庭の教育力についてお答えします。非行に低年齢化の傾向を考えましても、家庭の教育力が果たすべき役割は一層、高くなっています。そして、家庭の教育力を豊かなものにするためには、家庭生活において男性と女性がお互いを助けあい、力を合わせて子供の養育にかかわることが大変重要です。条例(案)がめざしているものは、男女がともに家族の一員としての役割を円滑に果たす家庭であり、このことは家庭の教育力の強化にもつながることであると考えております。
第三に家庭の教育力の強化こそが青少年の人格教育の前提であるとのご指摘です。人間は愛情溢れる家庭で育てられることにより、人間としてのやさしさや強さを身につけ、人格の基盤を形成していきます。昨今の青少年の健全育成上の問題を考えるとき、家庭の教育力にも課題があることが多く見受けられます。従いまして、家庭の教育力の強化の重要性を強く認識し、高めるための施策を推進してまいりましす。
次に文化、伝統の継承についてのお尋ねですが、日本には、日本古来の伝統や文化があります。そして現在もひな祭りや鯉のぼりなど、その伝統にのっとた文化や生活習慣があり、今後も尊重して行くべきことだと考えています。同時に例えば、少子高齢化や国際化などに対応して、新しい生き方や文化を認めていくことも大切であり、そのことによって社会が一層、活性化されると考えます。
第四に、文化・伝統の継承についてのおたずねです。教育委員会では、教育行政推進にあたっての基本方針に日本や世界の文化・伝統に触れる機会の充実図り、郷土に対する愛着や誇りを育む教育の重要性を揚げています。また、各学校では総合的な学習の時間等で、地域の特色を生かし、俳句、和太鼓や琴、染物等の文化・伝統に触れる機会の充実を図っております。教育委員会といたしましては、地域と連携した学校の取り組みを今後、一層支援し、子供たちが我が国の文化・伝統を尊重し継承して行く精神を培うよう努めてまいります。
最後に副読本の作成にあたっての配慮についてです。毎年、学校を通じて中学2年生を対象に、男女共同参画を考えるパンフレット「ハロー・ボーイズアンドガールズ」を配布しているところです。この冊子はだれもが一人の人間として尊重され、自分らしく生きて行くことをテーマに作成したもので、作成にあたっては画一的に男女の違いを排除することのないよう、また行き過ぎた性表現がないように十分配慮しているところです。
第五にジェンダーフリー及び、行過ぎた性教育の危険性に対する配慮についてです。まず「ジェンダーフリー」については、場合によっては男女の違いを一切排除するような誤った認識を児童生徒に与える可能性もありますので、現在、東京都教育委員会及び各区市町村教育委員会では、「ジェンダーフリー」そのものを使用しないようにしています。今後、男女が互いの違いを認めつつ個人として尊重しあうことのできるよう、人権教育の一環として男女平等教育を推進してまいります。また、行過ぎた性教育の危険性についてですが、学校における性教育は人格の完成を目指す「人間教育」の一環として、教育課程に位置付けて適切に実施することが大切です。教育委員会は性教育について、学習指導要領に示された各教科や領域等のねらいや内容に基づいて、発達段階に応じた適切な指導を行うよう、今後とも各学校を指導して参ります。