外国人との共生に関する一般質問(平成17年6月10日)
自民党新宿区議団の下村はるおです。私は外国人との共生に関して一般質問をいたします。
ご存知のように新宿区は二十三区のなかでも突出して外国籍住民の多い町です。
近年外国籍住民の流入が加速することに伴い、多くの地域課題が、特に大久保、百人町地域で
発生しています。この問題はこれまでも区議会で何度も取り上げられていますが、整理すると以下
のような課題があります。
1 ごみの不法投棄 2 生活騒音 3 自転車の放置 4 外国人商店による はみ出し陳列や
路上看板 5 震災時の外国籍住民への対策 などであります。
もちろんこれらは外国籍住民だけの問題ではありません。日本人住民であっても、特に短期的
にこの町に暮らそうとする若者や地域と交流をもたない日本人住民などの、問題でもあります。
新宿区もこれまで様々な取り組みをしてきました。新宿文化・国際交流財団の事業や特別出張所
単位の課題別地域会議でも、そして各学校単位でも、様々な形で行われてきました。
新宿区は平成十六年三月に「新宿区における外国籍住民との共生に関する調査報告書」を発表
しました。さらに本年夏には「しんじゅく多文化共生プラザ」を健康プラザ・ハイジアに開設すべく、
準備を進めています。
私はこの多文化共生プラザに大いに賛成するものです。地域の実情を調べ、積極的に地域の
課題に取り組む姿勢を示すことこそ、行政が行うべきことと評価します。
先の新宿区調査によれば、日本人の住民感情として「外国籍住民に対して漠然とした不安感を
感じるとともに、外国籍住民だけで、特定のエリアを作ろうとしているのではないか」という意見があ
ります。
とくにバブル崩壊以降、日本人が不動産を手放し、外国籍住民がこれを買うといった動きもあります。
最近の東アジアでの排日運動や言説も、日本人にとっても外国人にとっても、相互の感情を大変
複雑にしています。われわれはこれらの不安を解決し、未来志向で、東京のなかの新宿、アジアの
中の日本、を考えていかなければいけないと思います。
一方で先の新宿区調査によれば、外国籍住民の感情についてみると、「日本人による差別感、
言葉の壁」の問題などが根強くあると指摘されています。
そんな中、住民意識の変化も出てきています。地域の人たちは必ずしも外国籍住民の流入に
反対しているわけではなく むしろ地域にしっかりと根付いた在日と呼ばれる方々の歴史もあり、将来
を見据えてモザイク的な街づくりを模索したいという考えです。
最近では 街の特色のひとつにしようと、在留資格をもつ外国籍住民と外国系住民を地域の資源
として積極的に受け入れ、コミュニティーの新しい形、先進的な形を模索していく動きもあります。
外国系住民とは日本国籍を持ち、海外にルーツを持つ住民の方々です。
また、増えてきた外国籍住民をコミュニティーの中に取り込んでいかなければ、町会も商店会も
維持できないのでは、という意見も出てきました。
学校教育の現場では、学校側の積極的な取り組みにより、外国籍の子どもとその親に対して
地域のメッセージが伝えられ、着実にその成果を上げつつあります。
ただ一方、いくつかの試みがまだ成果を得るには至っていない面もあります。
たとえば、数年前、この地域で商店会に外国籍住民を役員として迎えいれ、商店会への外国人
商店の加入促進を図ったものの、残念ながらあまり機能しなかったこともありました。
またいくつかの日本の民間組織が音頭を取り、この地域で様々なイベントや事業を行って一定の
成果を得てきたと思います。しかしながら、地元を担う町会・商店会からかならずしも支援を受けて
きたわけではなく、たとえば地域事情に配慮する視点が少なかったことも確かです。
外国籍住民の団体が主体となった環境美化活動なども町会・商店会との連携がすくなかったと
いった面もあります。
いずれにしろこれらの取り組みは試行錯誤を続けながら、これからも多少形は変わるかもしれま
せんが、継続されていくことでしょう。
中山区長はシンポジュームなど様々な場でこの共生問題に積極的に発言されています。そして
新宿区による調査に続き、今回の多文化共生プラザの設置になったわけです。
それでは質問に入ります。
第一は 区民の貴重な税金を使う施策として多文化共生プラザは外国籍住民のための施設である
と同時に、日本人住民のための施設でもあります。共生プラザを基本的にどのように運営し、どのよう
な事業を行おうとしているのでしょうか。お伺い致します。
さて次に、そのような基本を踏まえて、具体的な提案・質問に移ります。
第二に、外国籍住民はもちろん、利用者である地元の町会・商店会の人たちに多文化共生プラザ
の設置を周知することがまず第一歩と考えますが、具体的にどのような方法を考えていらっしゃるの
か、お伺いいたします。
第三に、日本人住民の漠然とした不安や外国人のもつ差別感を解消するため、いわゆる地域情報
を発信して、たとえば地域の町会・商店会の役員と地元外国人組織、多文化共生団体などが「すこし
でもお互いの顔が見える状況を作り出すこと」が大切ではないでしょうか。そのために外国籍住民と
日本人住民向けの、地域組織の紹介パンフレットの作成を行うのはいかがでしょうか。お考えをお聞か
せください。
第四に、様々な事業が多文化共生プラザ内で計画されているようですが、そのなかで町会・商店会
が主体となる協働事業を提案いたします。そのためにはまず協働したい事業について地元の意見を
聞くことが第一歩だと思います。如何でしょうか。
第五に、そのような協働事業の切り口としてはなにが考えられるのでしょうか。1、防災 二、文化
交流 三、教育 四、食文化 などが考えられます。
国籍を越えて、老若男女いずれの階層にも関心があり、しかも緊急の課題としては 防災、特に震災
対策が考えられると思うのですが、この点お考えを伺います。
第六に、その事業の成否の鍵を握るのは、1、既存の外国人組織との協働 二、既存の日本のNPО
団体や組織との協働 三、学校との協働、等であると考えられます。これまでも新宿文化・国際交流
財団が先進的、積極的に様々な事業に取り組んでこられました。財団の実績を踏まえて、なにか押さ
えるべきポイントなど、お考えがあればお聞かせください。
以上で質問項目は終わりますが、最後に、この協働事業の究極の目標とはなにか、を考えてみたい
と思います。それはまさしく日本人住民も外国籍住民も、ともに暮らすこの新宿の町を愛すること、地域
への愛を育むこと、一歩でも地域が良くなるように相互で活動すること、であります。とりわけ町会・商店会
活動の活性化であり、それら地域コミュニティーの核となる組織への外国籍住民の参加であります。
中山区長のおっしゃる新たな都市型コミュニティーの構築であります。
結びに、大久保百人町地域の住民のお一人に今回のことでお話を伺ったとき、次のようにおっしゃった
言葉が印象的でした。
「時間を掛けながら少しずつ、あせらず着実に、性急な成果は求めないという基本的態度で、協働の
概念を前面に、この共生施設を運営することが大切なのではないでしょうか。
既存の文化事業である神社のまつりにも外国住民の方々が、もっと参加してほしいですね、これは
日本住民にも言えることですが…。」
以上の言葉を紹介し、質問を終わります。ご静聴ありがとうございます。
答弁要旨
下村議員のご質問にお答えいたします。
まず、多文化共生プラザの運営と事業についてのお尋ねです。
プラザは、日本人と外国人との交流を促進し、文化、歴史等の相互理解を深めるための拠点として
設置するものです。プラザに集う外国人、地域住民、活動団体のネットワーク化を推進し、参加者が
主体となる連絡会からのご意見、ご提案を運営に反映させてまいります。
また、区と新宿文化・国際交流財団との連携により、「日本語学習の支援」、「外国人相談」、「資料・
情報の提供」、「イベントや学習会による交流」等の事業を実施します。
さらに、活動団体や地域住民が主体となって行う、互いの文化、歴史、生活習慣等の理解を深める
ための様々な活動を支援してまいります。
次に、プラザの周知についてのお尋ねです。多文化共生プラザの周知につきましては、まず、7月8日
に大久保地域センターで、プラザの説明会と意見交換会を開催します。地元の町会に対しても、プラザ
の説明をさせていただき、地域の方の参加、協力を求めてまいります。今後、開館に向けて、広報紙
に特集記事を掲載するとともに、ホームページでも概要を紹介してまいります。
さらに、新宿文化・国際交流財団や活動団体等が発行するPR媒体にもプラザについて掲載できる
よう努めてまいります。
次に、外国籍住民と日本人住民向けの地域組織の紹介パンフレットの作成についてのお尋ねです。
プラザは、多文化共生のための拠点であり、ご指摘にありました「少しでもお互いの顔が見えるような
状況を作り出すこと」ができる交流の場となるように進めてまいります。プラザ内に資料・情報コーナー
を設け、行政資料や生活情報紙等により様々な情報を提供してまいります。
また、地域の町会や商店街等の行事をわかりやすく紹介するなど、地域で生活していく上で、知りたい
情報や知らせたい情報の交換ができるようにいたします。
そのほか、外国語版の広報紙やホームページを作成するなど、地域情報の発信や情報交換を進め、
日本人と外国人双方が持つ不安感の解消と相互理解の促進に努めてまいります。
次に、町会・商店会との協働事業についてのお尋ねです。プラザでは、多様な主体により、様々な事
業を実施していただきたいと考えています。
地元で生活する町会・商店会の方にも、ご意見をいただき、事業への積極的な参加を得、協働の主
体となっていただくよう期待しております。
また、地域で暮らす外国人に対して、町会や商店会等の地域行事へ参加するきっかけづくりを行い、
地域で共通の体験をする機会を増やし、相互理解を深めるための働きかけを行ってまいります。
次に、協働事業としての震災対策についてのお尋ねです。ご指摘の通り、「震災対策」は喫緊の課題
です。しかし、地震に対する外国人の認識はそれほど高いものではなく、防災訓練などへの参加は
あまり多くないという状況です。
そうした中、大久保地域では本年10月に、大久保小学校を拠点として、外国人と地元町会の方々との
協働により、「多文化防災訓練」の実施を予定しています。訓練を通して身近な関係を築き、いざ震災
時には協力し合って避難活動を行えるように準備を進めています。
今後も、こうした協働による活動について、積極的な支援を行ってまいります。
次に、事業を進めるにあたっての押さえるべきポイントについてのお尋ねです。
プラザの運営や事業を実施していくうえで重要なことは、多文化のネットワークをどう構築するか、と
いうことです。新宿文化・国際交流財団がこれまで培ってきたボランティア団体とのネットワークをさらに
拡充し、このネットワークに、地域の町会や商店会、個人の日本人や外国人、学校や事業所等多くの
方の参加を働きかけてまいります。
その上で、多文化共生プラザが、多様な文化をもつ人々が相互に理解を深める場となり、プラザを拠点
として、様々な協働事業を展開することにより、共に生きる地域社会が形成されるよう努めてまいります。