平成十九年第四回定例会 一般質問             平成19年12月3日
                     
 自民党新宿区議団の下村はるおです。「まちづくりと文化資源の活用について」
一般質問いたします。どうぞ誠意あるご答弁をお願い致します。
 このところ、さまざまな自治体で文化資源を通じて、まちづくりを行っていこうとする
動きが加速しています。
 例えば先日、日野市長さんと名刺交換させていただく機会がありましたが、名刺の
肩書きの前に「芸術文化の薫るまち」とありました。詳しくその中身をお聞きすることは
出来ませんでしたが、市長の並々ならぬ決意を感じました。
 先月の伊那市議会との交流会でも伊那市長さんの名刺は伊那の地図をベースに
した大変ユニークなものでした。

 今回の新宿区基本構想・総合計画の中でも文化資源を活用してまちづくりを積極的
に行おうとする中山区長の前向きな意思を読みとることができます。まちづくりの
基本目標の中で「こうした文化や伝統を活かし、新宿のまち全体の魅力を高め、
区民が誇れる、そして新宿を訪れる人が繰り返し訪れたくなるにぎわいと活力あふれる
まちをめざします」と述べられています。

 そのような中、新宿区でも街歩きをキーワードにガイド冊子や観光パンフレットを
各種作っています。これらの基となる立派な本も2冊上梓されました。
これらには3つの意味があると思います。
 一つ目は地域の文化資源を見直すことによって、地域社会への郷土愛、コミュニティの
再構築を進めていこうとする意味、二つ目は魅力ある文化資源を多くの区外の人々にも
訪れてもらい地域の賑わいを作るという意味です。三つ目は文化をまちづくりの核に据え、
まちづくりの重心を従来のハード中心からソフトへ移すという意味です。同様の考え方が
大規模開発でも注目され、いくつも計画、実行されています。
 例えば、新宿区の生んだ文豪夏目漱石、新宿区に住んでいた小泉八雲や新宿区
生まれの未来特使「鉄腕アトム」を通じてのまちづくり活動です。歌舞伎町ルネッサンスの
「ライブミュージックプロムナード」もライブ音楽活動による「安心安全なまちづくり」を
目指しています。
 以下では「文化資源」といっても自然や景観、歴史的資産、音楽、演劇、映像、
美術館や各種博物館まで含む大変幅広い範囲をさしており、すべてについては言及
できませんので、以下いくつかに限定して、話を進めます。
 
 これらの文化資源による文化芸術活動は経済的に成立するのでしょうか。これらの
活動を担う人たちは大多数がアマチュアの区民、ボランティアであります。営利が目的で
なければ、経済基盤を論議することは意味がないかもしれません。しかしアマチュアとは
言え、生業との兼ね合いで負担にも限度があることも事実です。
 さらにイベントを行えば短期的には大きなリスクを、長期的に後継者の育成の問題も
あります。
 話は大袈裟ですが、過去の内外の歴史を見ても、文化財は大パトロンがいて、
それらの人々が巨額の私財を投じて芸術活動を支えたり、大きな文化遺産を作ってきた
ことが多いわけです。例えばイタリアルネッサンスの例です。

 現代はなかなかパトロンとしての役割を果たす人を見つけ出すことが困難な時代です。
 すなわち経済支援のひとつの方法として市民ファンド、ミニ公募債のような志ある
資金が考えられます。コミュニティの構成員自らが文化資源の維持や発展に乗り出す
取り組みです。
 しかし私見ですが道のりは長く簡単なことではありません。税務上の寄付金控除の
充実のほうが早い手段かもしれません。
 そこでこれらの文化資源に関連していくつか公的補助について質問いたします。
 
 これまで新宿区は「補助金の見直し」を積極的に行ってきました。見直しの基本は従来型
の一律方式を改め、サンセット方式で各事業ごとに補助することにより、その性格と効果を
よりん明確にするという考え方です。
 ただサンセット方式では文化財の性格上、うまくマッチングしない場合が多いと思います。
 そこで質問の第一は新宿区有形・無形文化財へ年間の行事予定や要望などを精査し、
補助金を交付することはいかがなのでしょうか?
 文化財としての性格を考えれば、一年間といわずもう少し長期の視野に立っての議論や
配慮もほしいところです。
 無形民俗文化財などではいろいろと活発な活動をすればするほど、自主財源では足りない
というのが現実ではないでしょうか。
 例えば、鉄砲組百人隊や戸塚囃子など人の手による文化活動、人から人へと伝わる
活動はこれに該当します。
 是非この点を再考してみてはいかがでしょうか。
 
 続いて映像によるまちづくりについて質問いたします。
 新宿区内のさまざまな地域を映像の題材として取り上げてもらうことは自分たちが
慣れ親しんでいる場所を、改めて他人の目で見ると、新鮮で不思議な感動を得られる
という意味でも価値があります。
同じ風景であっても視線の違い、考え方の違いでさまざまな映像が生まれるからです。
 積極的に撮影を誘致したり、作品の舞台として新宿を題材として取り上げるように働き
かけることが重要です。すなわちロケ場所情報を提供したり、ロケしやすい状況を作り出す
ことも重要です。
 そこでフィルムコミッションの設立を検討してはいかがでしょうか。さらに新宿区の
公共施設を積極的にロケ地として提供するなど、映画によるまちづくりを積極的に考えては
いかがでしょうか。
はじめは類似の組織でもよいかもしれません。
 例えばテレビドラマではありますが、神楽坂が「拝啓父上様」で紹介され、大変注目を
集めたそうです。私もダイジェストを見ましたが、倉本聡の脚本もよかったとは思いますが、
神楽坂の風景がとても印象に残りました。
 昨年は「あなたを忘れない」という日韓共同の映画制作があり、間接的にロケ地の照会が
ありました。
 全国フィルムコミッション連絡協議会によれば、現在全国に九八ものフィルムコミッション
があり、例えば都内ではすでに東京都、八王子市、先ほどの日野市、八丈島がフィルム
コミッションを設立しています。
 
 次に演劇とまちづくりについて質問いたします。 
 文化資源はそれ自体ストーリー性を持っていますが、演劇によるまちづくりは街の魅力の
奥行きを深めます。演劇は先の映像事業にはない一瞬の、生の感動を与えます。
 生の音楽と同様、ともすればデジタルに偏っていく現代の中で大変貴重な感動を生んで
います。
 本年一月、埼玉県芸術振興財団によるさいたまゴールドシアターが話題を呼びました。
いわゆるゴールド世代を中心のアマチュア劇団員による演劇集団を蜷川幸雄氏が演出
指導をし、公演するという試みです。
 一般市民・区民を巻き込んだ演劇、特に歴史のあるオペラ組織などが注目を集めています。
新宿にも歴史ある新宿区民オペラがあるそうです。
 以下はプロの劇団による公演ですが、十二月には四谷区民ホールでわらび座による
ミュージカル「坊ちゃん」、さらに来春、新宿文化センター改修の柿落としに同じくわらび座と
新宿区との共同制作でミュージカル「火の鳥」も行われます。
 ぜひ新宿区でもこれらの取り組みを積極的に応援してはいかがでしょうか。お考えを
お聞かせ下さい。
 
 質問の第四に移ります。
 総合計画の中に吉本興業、宝塚造形芸術大学、芸能花伝舎との連携による「(仮称)新宿
文化ロード」の構想が述べられており、大いに期待しています。 
 芸能花伝舎は芸能を中心とする文化の、吉本興業は大衆娯楽の創作の、宝塚造形芸術
大学は広い意味での芸術教育の、それぞれ発信拠点として役割をはたすものと期待して
おります。
 これらの3拠点に加え区内のさまざまな組織がネットワーク化することが重要であると
思います。
現在はまだ構想の具体化が進んでいないとは思いますが、ぜひこの区内全体のネットワーク化
の視点をいれた具体的な計画を作っていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。  
 
 質問の第五に移ります。
 文化芸術活動への区の内部組織の受け皿・窓口を一本化し、コンシェルジュ機能など
支援体制の強化を図るべきと思いますが、いかがでしょうか。さらにマスメディアへの発信
も大切です。いかがでしょうか。

以上で私の一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

《答弁》
(1)下村議員のご質問にお答えします。
まず、年間の行事予定や要望などを精査し、新宿区有形・無形
文化財への補助金についてのお尋ねです。
 鉄砲組百人隊や戸塚囃子などの無形民俗文化財は住民の方々
がまさに文化の担い手となってまちの記憶を伝え続けてきた証
だと思います。
 これらの活動をささえることは、新宿が培ってきた文化を
さらに成熟させ、現在策定中の基本構想が目指す、「新宿らし
さ」の創造につながります。
 現在、鉄砲組百人隊などの無形民俗文化財は、ふれあいフェ
スタや新宿芸術天国などのイベントなどで披露されています。
 議員ご指摘の資金的な支援や、活動の場の提供など、総合的
に検討してまいります。

(2)次に、フィルムコミッションの設立や公共施設を積極的
にロケ地として提供してはどうかとのお尋ねです。
 映画やテレビは、いつもと違う視点を私達に与えてくれ、
今まで気が付かなかった地域の魅力を知ることができ、
わがまちへの誇りや愛着が深まることにもつながるものです。
 その一方で、撮影のされ方によっては、まちにマイナスの
イメージをもたれてしまうような可能性も否めません。
 映画やテレビのロケ地情報を効果的に提供し、撮影に必要な
手続きをサポートすることで、新宿の多様な魅力、文化を
幅広く効果的に情報発信していくことが出来ると思います。
 現在策定を進めている実行計画では、文化と観光の融合を
図り、新宿の魅力を総合的に発信する(仮称)新宿観光ビュー
ローの設立を盛り込んでおり、このビューローにフィルムコミ
ッションの機能を持たせることを検討するなど、多くの人に
新宿の魅力を発信してまいりたいと考えています。

(3)次に、演劇によるまちづくりについてのお尋ねです。
 議員ご指摘のとおり、演劇は私達に一瞬の、生の感動を
与えてくれます。このような新鮮な感動は、区民の文化芸術
活動への参加を促進することにつながります。
 新宿文化国際交流財団は、新宿区民オペラなどの地域文化
団体について、文化団体の登録を行い、施設の優先予約、使
用料減額などにより活動を支援しています。また、財団主催
事業として、平成17年度から参加体験型の事業として、
公募によるオペレッタ合唱団を編成し、実施しております。
 区の事業としては、この12月にミュージカル「坊ちゃん」
を、来春には新宿文化センターリニューアルオープン記念
として、劇団わらび座との共同制作のミュージカル「火の鳥」
をそれぞれ上演いたします。
 これらの取り組みにあわせ、区民を巻き込んだ事業の展開
を図り、区民の文化芸術活動を支援してまいります。

(4)次に「(仮称)新宿文化ロードの創出」事業の具体的
な施策についてのお尋ねです。
 新宿には、豊かな伝統や歴史が息づき、多様な文化が育まれ、
新たな最先端の文化も生み出されています。
 吉本興業、宝塚造形芸術大学、芸能花伝舎は、それぞれ
異なる特徴を持っており、その特徴を生かしつつ三者の連携を
図ることで、新しい文化芸術の創造と発信に結び付けられる
ものと思っています。
協力体制を構築し、共同してイベントを実施するなどの取り
組みを進めてまいります。
 また、区内にはこのほかにも、実に様々な文化芸術団体が
多様な活動を行っています。
 これらの団体が新宿文化ロードの連携の輪に加わる仕組み
を整えていくことで、連携の相乗効果を更に高めてまいりま
す。
 こうした取り組みにより、」文化芸術創造のまち 新宿」
を広く情報発信し、より多くの人々を惹き付け、にぎわいを
創出してまいります。

(5)次に文化芸術活動への区内部組織の受け皿・窓口を
一本化するなど支援体制の強化を図るべきとのお尋ねです。
 現在の組織体制では、区長部局においては地域文化部
文化国際課が文化施策の企画、調整に関することを担い、
教育委員会事務局においては生涯学習振興課が生涯学習・
スポーツの企画および調整に関することは地域文化部に集約
します。さらに、将来的には一部類似する事業を実施して
いる新宿文化・国際交流財団と新宿区生涯学習財団の統合を
視野に入れ、また、文化と観光の融合を図り、新宿の魅力
を総合的に発信する(仮称)新宿文化観光ビューローを設立
するなど、この分野の発展に力を注いでまいります。